マイクロ波の技術,産業,教育に関する国内最大級のイベント
マイクロウェーブ展 2023

11月29日~12月1日,マイクロウェーブ展2023がパシフィコ横浜で開催された.マイクロ波の技術は携帯通信やエネルギー,医療,セキュリティ,流通など,生活に密着したところで広く使われている.展示会では,デバイスやモジュールから,誘電体/ 絶縁体,コネクタ/ケーブル,測定器/プローブまでの最新の技術や製品が展示された.また,大学や高専などの研究成果を発表するコーナも多数あり,今後が楽しみであった.

 

● 車載EthernetのMDI測定に対応したVNA

アンリツは,ベクトル・ネットワーク・アナライザ「MS 46522B」を展示.車載EthernetのPMA(物理媒体接続部)テストのうち,MDI のリターン・ロスとモード・コンバージョン・ロス評価が可能.評価に必要な周波数範囲10Mbps~10Gbpsをカバーし,Sパラメータから差動パラメータSDD11/SDC11へ変換が可能.PMAテストの他の項目はテクトロニクス社と連携し,テスト・フィクスチャもテクトロニクス社製を使用する.

 

● 低誘電率基板,キャビティ基板,高熱伝導基板など

エイト工業はプリント基板アクセサリで有名なマックエイトの兄弟会社で,防衛・宇宙・航空用などの特殊なプリント基板を製造する.テフロンなどの低誘電率基板の製造はもちろん,基板側面や半割りのスルーホールの形成,中央部を座ぐりして部品実装できるキャビティ基板,ICの裏面PADの放熱に銅コインを埋め込む高熱伝導基板などにも対応.プリント基板で困ったときは相談する価値あり.

 

● 高周波信号の反射を低減した 超小型コンタクト&ナット

エスマークス コーポレーションは,ロスレス・トランスミッション・コンポーネントの国内メーカ.S M AR X コンタクトは基板対基板のコネクタで10GHzまでの高周波信号の反射を大幅に低減させながら伝送できる.SMARXリフローナットは非貫通で自動実装可能な基板実装用ナットで,非貫通のため反対面にパターン配線や部品配置が可能.フラックス上りも防ぐことができる.フランジ位置や形状などで,たくさんのバリエーションがある.

 

● 24/60/79GHz帯を利用したミリ波センサ

SMKの24/60/79GHz帯を利用したミリ波センサ「Milweb 」は,距離と速度,角度を検知するセンサと,収集したデータを処理する自社開発のアルゴリズムを組み合わせている.対象物や検知距離/対象によって周波数を選択する.エナジーハーベスト・シートは,920 MHz 帯の無線給電とソーラー発電を独自の方式で組み合わせている.電池交換不要で,軽量化や薄型化,ランニングコストの削減を実現するとともに電池の廃棄量を低減し,CO2排出量削減にも貢献する.

 

● RF/マイクロ波回路電磁界シミュレータ

MELはRF/マイクロ波回路電磁界シミュレータ「S-NAP Wireless Suite」と,3次元EMCシミュレーションソフト「S-NAPPCB Suite」を展示.S-NAP Wireless Suiteの回路解析では,S パラメータによる高周波回路の解析,回路定数の自動調整などが可能.電磁波解析ではモーメント法により,平面ではプリント基板上のアンテナやマイクロストリップ・フィルタなどを,3 次元解析ではアンテナ関連や非接触充電,IoT機器の人体への影響などの電界をヒートマップ表示できる.

 

● 100kHz~13.6/20/40GHzの RFシグナル・ジェネレータ

SIGLENT はSSG 6000 A シリーズを展示.周波数分解能は0.01Hzで,出力レベル設定レンジは-130~ +24dBm,位相雑音-135dBc/Hz,オフセット20kHz@1GHz.IQ変調機能はなく,アナログ機能に特化している.AM 変調は標準搭載で,パルス変調,パルス・シーケンス・ジェネレータ,電力計制御などの機能もサポート.

 

● 組み立て式の電磁波シールド・テント

東京計器アビエーションは,低コスト/ 単納期/ 省スペースのシールド・ルームを展示.使用するときはパイプを組み立ててフレームを構成し,シールド・クロスを吊り下げてシールド・ルームを構成する.シールド・クロスは減衰量が異なる一重と二重が選択でき,対応最高周波数は10GHzと30GHzの2種類がある.レンタルも可能.

 

● AIを導入したプリント基板設計CAD

日本ケイデンス・デザイン・システムは,AIを活用したプリント基板設計CADソリューション「Allegro X AI」を展示.人による配置配線で3 日かかった基板設計を30 分で終えることができる.強力に時間短縮できるので,層数やサイズなどの条件変更も短時間で行うことができる.AI が使用する基礎データは,ケイデンス社からインターネット経由で入手できる.

 

● 60GHz帯超広帯域技術UWBを使用した レーダの評価キット

ピーティーエムは,レーダ評価キット「WIZ-1」を展示.アンテナ内蔵のAiPデバイスを搭載し,ローコスト/低消費電力を実現.送信1 c h ,受信3chにより三次元での検知が可能.Arm Cor te x -M 4 の採用によりBOM コストを削減.技適取得済.アプリケーションに合わせて出力データが異なるモジュール/ 評価キット/SDKを提供.

 

● 簡易マイクロ波空間分布可視化センサ

ミニサーキットヨコハマは,2.4GHz帯で250W出力のパワーアンプを使用したミクロ電子製のデスクトップ加熱器を展示.マグネトロンと比較して低消費電力化が図れる.可視化センサ「ほたる」は,電波が照射された箇所のチップLEDが光ることで,電波の照射が目で見てわかる優れもの.

<武田洋一>