キーサイト・テクノロジーのInfiniiVision HD3シリーズ(図1)は, 同社のハイエンド・モデルの技術を余すことなく盛り込んだ高性能なポータブル・オシロスコープである.14ビットA-Dコンバータを採用し,12ビット機種と比較して電圧軸(縦軸)の精度を4倍に向上した.
ノイズ・フロアは低ノイズのフロント・エンドにより従来の半分である 50μVRMSを達成した(図2).専用カスタムICを使用し,130万波形 / 秒の波形更新レートを実現しているほか,信号計測やシリアルデコード解析,ゾーントリガー設定時にもサクサク動き波形更新レートも低下しない.
標準で20Mポイントのロング・メモリを搭載し,タイム・スタンプ付きリスト表示機能と合わせて長時間のキャプチャができる.さらに,新しく追加されたフォルトハンター機能により,グリッチや発生頻度の低い不具合信号を自動で検出でき,デバック効率をあげることができる(図3).
マイコンの電源端子をモニタするデモでは,汎用出力ポートの“H/L”レベルの高速切り替えや, CPUの演算状態による電源電圧の変動が一目で分かった.高精度でSN比が良いことにより,電 源ノイズの波形を詳しく観察できる(図4).
操作性はシンプルでシックなフロント・パネルに,ハイ・コントラストの照光式スイッチとタッチ・パネルにより初心者でも使いやすいと感じた.標準機能で周波数応答解析,ヒストグラム,FFT,フォルトハンター,ゾーントリガー,セグメントメモリを装備している.帯域幅の350MHz以上への拡張や50Mポイント以上のメモリ拡張,100MHzファンクション・ジェネレータ,プロトコルデコード/トリガーなどのオプションは購入時の指定のほか,ソフトウェアのアップグレードで対応できる.
ライター:武田洋一