MelDIR は,サーマル・ダイオードを使用した80 × 60 画素の赤外線センサで,人間や物体が発する赤外線を検知する.CMOS 構造のダイオードの温度特性を利用し,ASIC で信号処理を行ってデジタル・データで出力する.サーマル・ダイオードは人工衛星での実績があって,2019 年からは三菱電機のルーム・エアコン霧ヶ峰ムーブアイmirA.I.やグループ会社のAI×見守りサービスのKizkia-Knightへの採用されている.
今回新発表のMIR8060C1は,レンズの改良により100°×73°の広画角を実現し,熱画像を不鮮明にする光入射成分を抑制した(写真2).
広画角化により,既存製品( M I R 8060 B 1 比)で2 倍以上の面積が検知可能となり,一般的な家庭の2.4m高の天井に取り付けた場合では約12畳の床面をカバーする.同じ高さで天井の角に斜めに俯瞰するように設置した場合では,人間が平均的な身長であれば立った状態で頭部から足元までカバーできるため,設置台数を削減でき機器や設置などのコスト・ダウンや集約装置の負荷を減らせる.
温度データは80 × 60 画素の1 画素ごとに温度データとして,S P I インターフェースで出力するため組み込みマイコンとの親和性も高い.3.3V電源動作で最大消費電流は50mAである.
従来,温度センサには,画素数が少ない場合は低価格な焦電センサが,画素数が多いものは高価な赤外線カメラやボロメータが用いられている.赤外線センサMelDIR は,半導体プロセスを用いて量産時1000 円台のコストを実現したためエアコンのような白物家電はもとより新しい市場に対応できるようになった.
MelDIRは,赤外線により温度を測定しているので,外乱光の影響を受けにくく,目視できない暗闇や煙が充満して光が散乱する環境でも測定できる.
MelDIRで取得するデータはカメラのような画像データではないため,プライバシーやセキュリティに対するハードルが一気に低くなる.このため介護施設や病院での人数のカウントや,温度分布の把握により寝返りなど姿勢検知による見守り,浴室やトイレでの転倒など異常検知,ビルやオフィスのスマートな空調や防犯にも向く.
温度による設備監視が極めて容易なのでIoT による社会課題の解決に貢献できる.
開発ツールとして,評価用デモ・キットや開発用リファレンス・デザイン情報の提供を行っている.中でも人や動物の判別や,人間の姿勢検知のアルゴリズム開発にはAIモデル作成ツールを提供し,画像ファイルを元に学習させて開発効率をアップさせている.
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MelDIRシリーズは今回発表のMIR8060C1を含めて4製品あり,+ 200℃まで検知できる製品もラインアップされているので,様々なアプリケーションが期待できる.
ライター:武田洋一
詳細は各社発表の情報をご確認ください.