圧力/加速度センサなどに幅広く用いられているMEMSの専門展示会
MEMSセンシング&ネットワークシステム展 2024 など

MEMS SENSING & NETWORK SYSTEM展が2024年1月31日~2月2日,東京ビッグサイトで開催された.来場者数 は42,034名,オンライン参加を含むと52,351名であった.今回はnano tech展やWELL-BEING TECHNOLOGY展ほか, 合計15の展示会が開催され,1枚の入場券で全てに入場でき,次世代センサに向けた要素技術研究や新技術,新製品を幅広く 見ることができた.

 

●高感度・高精度フレキシブルひずみセンサ(センシアテクノロジー

金属箔ひずみゲージの250倍以上の感度の抵抗変化型ひずみセンサで,動作時のドリフトがなく高精度にひずみ・曲率などの計測が可能.産業技術総合研究所が開発した特殊なインクを用い,ゲージ率500 以上の抵抗膜でリニアな曲率-抵抗変化が得られる.Diver-X 社のV R グローブに採用されている.センサ単体はスイッチサイエンスで購入可能.

 

●銀ナノ粒子インクジェット・インクで回路描画(ゼネラル

銀ナノ粒子をインクジェット・プリンタで印刷して回路を描画するシステムを展示.焼成不要でオンデマンド印刷が可能なため小ロット多品種の生産が容易.水系インクなので環境にも優しい.RFIDのアンテナやセンサ,ヒータなどに応用が可能.

 

● 微小領域の高周波電界計測・電磁波吸収材料が 評価できる高周波電界センサ(秋田県産業技術センター

高周波電界中に置いた誘電体からの散乱波に振幅変調を加え,遠方に設置したアンテナで散乱波を受信することで電界を計測する技術.散乱波の誘電率を光で制御する光変調方式を採用することで,分解能の大幅な向上と高速化を達成した.L S I チップのノイズ源分布評価やアンテナの電界分布,電磁波吸収材料の性能評価などを,測定電界を乱さず低コストかつ迅速に行える.

 

●環境熱から電気を創る発電技術(GCEインスティテュート

まったく新しい構造で,環境熱から発電するデバイスを開発している.ゼーベック効果による発電と違い温度差が不要のため冷却が不要かつ高温になるほど高い出力が得られ,フレキシブルで大面積化が可能などの特長がある.機器の発熱による発電やIoT センサ用電源,体温による発電が想定される.

 

●電線近くで発電する磁界振動発電デバイス(大阪公立大学

交流電流が流れる電線から電力を得る自立電源が実現でき,電池フリーなIoT デバイスが実現可能.圧電体で構成した片持ち梁の先の磁石が交流電流の磁界で振動することにより発電する.ACラインのような平行電線でも片側の電線に配置することで発電が可能.現在は4 A のACラインでDC10 V,2mW 程度を発電する.機械的に発電するのでサージにも強く,完全密封も可能.トライアル用デモ機の貸し出し中.

 

●スマート振動センサ(水戸工業セイコーエプソン

水晶振動子の技術を用い,今まで見えなかった極めてわずかな振動を周波数の変化で手軽に計測でき,建物や地面などの低周波数の振動計測に適している.クリーン・ルームや架台/ 浮床の振動,精密計測機の振動影響調査,クレーン車や高所作業車の水平検出,装置の傾きなどがビュア・ソフトウェアでモニタできる.PCとはUSBとBluetoothで接続.

 

●生体用電極向けスクリーン印刷シート(帝国通信工業

独自の多層印刷技術で,生体信号を安定して検出できるディスポーザブル電極.信号層をシールドと発泡層ではさむことで,肌触りがよく耐ノイズ性に優れた検出を可能とした.頭部に張り付けて脳波を観察することでの睡眠検査や,1滴の尿からナトリウムとカリウムの比率を測定して高血圧のリスクを軽減するコンパクトな機器に採用され,健康を守っている.

 

ライター:武田洋一