1980年~90年代のトラ技は,今の2倍以上の3cmほどの厚さがありました.それは記事の数倍の広告があったからです.半導体・機構部品・メーカ,そして代理店・販売店など,多彩な業種からさまざまな製品の広告が掲載されており壮観でした.その頃のIC はまだ単機能で,機器を作り上げるには数十個以上のIC を使い,基板もケースも,そして電源も大きく,機器というよりは装置という言葉がぴったりでした.トラ技は最新技術の記事と,部品の入手方法や価格を知る重要な情報源であり,その当時,秋葉原のパーツショップの店長だった私も,毎月8 ページ以上の広告を出稿していました.
ドラマの中で関山老師が「トラ技には背骨がある」と語ったように,エンジニアにとって技術記事が背骨で,広告は当時の電子業界の「筋肉」や「皮膚」だったのかもしれませ.しかし,広告は時間が過ぎれば価値はなくなっていきますので,分厚いトラ技の「圧縮」というのは自然な流れだったと思います.ちなみに,私は「毟り派」で,「アイロン派」の友人もいました.
ドラマでは元日本テレビアナウンサー福沢朗氏,大河ドラマ「どうする家康」に出演している溝端淳平氏が扮する梶原倫夫,坂田成美役で俳優の阿部亮平氏らの,熱意ある名演技
が「第27回トランジスタ技術圧縮大会」を盛り上げます.「毟り派」の坂田成美も「アイロン派」の梶山倫夫も同じ関山利一という「圧縮の神」と呼ばれる老師の弟子です.師匠を見切って力任せの毟り派に転換した坂田成美も,結局最後には老師から伝えられたアイロンを用いたことは,エンジニアも道具を使い丁寧に仕事をこなすことが大切なことを再認識させられます.そして,アマチュア無線の免許を持つ,ストーリーテラーのタモリが語るメッセージが,まさに人生を語っているようでした.
本ドラマはフジテレビ公式動画配信サービス「FOD 」で配信されます.トラ技の「圧縮」経験をお持ちの方はご覧になってはいかがでしょうか.<武田洋一>
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